がんになった親と子どものために

よくある質問

がんになった親自身やご家族、医療従事者(医師、看護師、臨床心理士、ソーシャルワーカー、チャイルド・ライフ・スペシャリストなど)、教育・福祉に携わる方たちが抱く疑問を想定して、参考になると思われる回答を書いていきます。

親ががんであることを子どもに伝えることに抵抗感をもっている家族に対してどのように支援すればよいでしょうか。
抵抗感を持つ理由
1)伝えた後のフォローアップをどうしたらよいか分からない
2)親が自分のがんは遺伝するかもしれないという不安を持っている
3)片親、再婚、祖父母が養育者など複雑な家族背景がありサポート体制が弱い家族である

1)伝えたあとの子どもの反応を心配するあまり、子どもに話すことに抵抗感を示す場合が多いです。しかし通常子どもは状況を見て親の何らかの変化を感じています。きちんと情報提供しないと余計に子どもの不安や恐怖感が高まる傾向にあります。
伝えた後のフォローアップについてもそれが正しく行なわれる、行なわれないということよりも親子間で正直に物を伝え合えるオープンなコミュニケーションをとることが大切です。できるだけ家族のメンバーがコミュニケーションをとり、子どもが何を知っているのか、何を見てどう感じているかを見極めることも大切です。親が亡くなったあとは誰が面倒をみていくのかを伝えておくことも重要です。

2)がんが遺伝するかもしれないという不安を持っている場合のことですが、確かに遺伝性のがんの問題というのはあります。思春期の子どもからそういった情報を知りたいという質問が出てきた場合には、それを調べる検査があるということを伝える必要がありますし、医師はそういった検査についてよく精通している、ということも伝える必要があると考えます。

3) 親ががんであることを伝えることによって家族の状況がより複雑になる可能性はあります。しかし特に片親の場合には情報を提供しないことのリスクの方が大きいと考えます。片方の親が亡くなったとき、誰が自分の面倒をみてくれるのかということは子どもにとってはとても重要な問題です。親の病状がどうであるか、亡くなった後に誰が面倒をみてくれるのかという情報を提供しておくことは大切です。

上記のような情報を子どもに伝えることの必要性を親に伝えることが大切です。ただし、子どもに話したくないという家族も多くいます。最終的に子どもに情報を提供する、しないは家族の判断に委ねるべきでしょう。

(Hope Treeフォーラム2011 質疑応答でのマーサの回答1)

親が自分の病気を子どもに伝えたくない場合はどのように対応したらよいでしょうか。

子どもに病気を知ってほしいと思う親がいる反面、知ってほしくないと思っている親がいることも確かです。子どもに伝えたくないという親に対しては、親の病状や死は子どもにとって重要な問題であり、子どもにそのような情報が伝わらないことのマイナス面を時間をかけて伝えます。
それでも親によってはどうしても子どもに知られたくないとい思っている場合もあります。それが親の希望であれば尊重します。
私のいるアメリカの緩和ケア病棟では、医師・看護師が患者に「病気のことを子どもさんに伝えましたか」と聞くようにしています。ですから親子間のコミュニケーションが大事だということは私だけが伝えるのではなく医療チームすべてが強調しているのです。

(Hope Treeフォーラム2011 質疑応答でのマーサの回答2)

患者本人が病名を知らない状況で子どもに親の病気について伝えると、子どもは親の前で嘘をつかなければならないことになります。このような時はどうすればよいでしょうか。

それは大変難しい状況です。ただこのような場合も正直であることが大切です。次のような言い方ができるかもしれません。「あなたのお母さんは非常に病気が重いので、何が起こっているのかお母さんはすべてを知っているわけではない、でもあなたに対してはきちんと伝えることがあなたを尊重することだと思うので伝えたい、これからどんなことが起きるのかをあなたにわかってもらいたいから伝えるのですよ」という風に。
子どもというのは生まれながらに親を守りたいと考えています。そのため全部の情報が患者である親に伝わっていないことも理解してくれるでしょう。
しかし親の前では感情を抑えることが難しくなることがあるかもしれません。このような場合は親のいないところで子どもが感情を表現することができるように医療スタッフや他の家族が十分に支えなければなりません。
人は長い間生きている中で親の死と向き合っていかなければなりません。ですから子どもが正しい情報を知っていることは大切でしょう。

(Hope Treeフォーラム2011 質疑応答でのマーサの回答3)

患者である親が、自分はまだ死なないだろうという希望を持っているために、子どもと死を意識した話をうまくできないときはどうすればよいでしょうか?

たとえ親がこれから60年、70年と長く生きるかもしれないとしても子どもが「死」というものを知っていることは大切です。息子が産まれたときに私は子どもに対してその日どのようなことが起きたかなど短い分を書いた日誌をつけ始めました。これは私自身ががんになる前にすでに始めていたことです。何かを書いて子どもに伝えることもできますし、子どもはこのような情報を大事にしているのです。死が近いからこのようなことをするのではなく、子どもを愛しているから行うのです。

(Hope Treeフォーラム2011 質疑応答でのマーサの回答4)

積極的治療をあきらめきれない患者の子どものケアはどうすればよいでしょうか。

とても難しい問題ですが、積極的治療が身体に大きな負担を与えるとしても患者自身が最期まで闘いたいという強い願望があることを子どもに理解してもらえるように支援することが大切です。このような場合にはあくまでも事実関係をフォローする必要があります。体の中でがんがどんどん大きくなっている、多臓器に転移しているなど実際に起こっていることを逐一伝えて治療に関して親に起こっていることが分かるように支援する必要があります。

(Hope Treeフォーラム2011 質疑応答でのマーサの回答5)

いつ亡くなるかを予測するのは難しいが、子どもに親の死を伝えるタイミングをどのようにはかればいいか。

死の24~36時間前になると体のほうから色々なサインが出てくるためある程度の死期がわかります。このような段階でまだ子どもに伝えられていない場合は、すぐに子どもに伝えるようにします。
ただ私の病院ではアメリカ全土・世界中から患者が来ます。そのため遠く離れた州にいたり、本国に残っていて死の直前に子どもがその場にいない場合もあります。遺された親が家に帰ってから直接子どもに死んだことを伝えたいという場合もあるので亡くなって1~2日後に子どもに伝えることもあります。完璧な答えはなくベストをつくすことが大切です。

(Hope Treeフォーラム2011 質疑応答でのマーサの回答6)

親が亡くなった後いじめや不登校などが懸念されますが、遺された子どもへのケアはどうすればよいでしょうか。

学童期の子どもから良く聞かれるのは次のようなことです。「今度学校に行ったら何て友達に伝えよう。」「休んでいたことを聞かれたら何て答えよう」「ママが死んだことを言いたくない。」
子どもは学校に行ったときにどう振舞えばいいかをよく心配します。そういうとき私たちは本当のことを知ってもらいたいと思う友達はいないか、学校の先生に本当のことを伝えたいかと聞きます。
YESなら私たちのような大人がそれに該当する友達や学校の先生に直接伝えます。クラスメイトにどのように知らせるかですが、まず子どもの許可をとって私のような周りの大人が学校の先生に伝えます。そして先生からクラスメイトに伝えてもらいます。
こうすることで子どもは何度も周りの子から同じような質問を聞かれることがなくなります。子どもによっては私が学校に連絡してもいいという子もいるし、自分で直接学校の先生と話し、「クラスメイトにこのように伝えて」と言う子もいます。
このようなことからも子どもは自分で自分自身をコントロールする力を持っていることが感じとれます。このような問題が解決すると、子どもにとって学校に行くことは穏やかな元の生活に戻ることにつながります。
病院で様々なドラマがあった子どもにとって元の生活に戻ることができるというのは大切なことなのです。

(Hope Treeフォーラム2011 質疑応答でのマーサの回答7)

アメリカでは子どもをケアするシステムがすべての病院にあるのか、それとも特別な場所だけで行われているのですか?すべての病院で行われているのであれば医療者や病院への教育システムはどうなっているのですか?

すべての病院で行われているわけではないが出来るだけ多くの病院でこのようなケアが行われるように努力しています。CLS(※チャイルド・ライフ・スペシャリスト)は子どもの発達についてよく理解しているので理想的な担当者といえるでしょう。医療ソーシャルワーカーも小児の発達について十分な知識を持っており様々な機関に所属しているため親の病気を子どもに伝える上で重要な役割を果たすでしょう。
アメリカにあるグリーフセンターは病院に所属しているものでなく独立した機関として地域社会に存在しており地域社会や企業から資金援助を受け支えられています。
医療スタッフに対する教育ですが徐々にこうした問題に対して意識を持つ人が増えてきているのは事実です。
ここに来ている人々が今日得た情報を自身の施設で広めていくことが患者支援につながります。
また医師がこうしたサポートを患者や子供が受けることの有効性を知ることでより一般化していくでしょう。
※CLS(チャイルド・ライフ・スペシャリスト):医療環境にある子どもや家族に心理社会的支援を提供する専門職

(Hope Treeフォーラム2011 質疑応答でのマーサの回答8)

日本の宗教観から親が死んだあと星になると言ったりするがどうでしょうか。

その国の文化や宗教の枠組みの中で行っていくことは大切です。アメリカでは、大事なのは人が死ぬ、死んでから星になるということを強調します。死んだらただすぐに天国に行く、星になるという話しかたではなく、死んで体が機能しなくなった「死」をまず説明し、それから次のステップである、天国に行く、星になるということを伝えるのです。「死」のステップを抜かすと、自分も突然星になってしまうのではないかという怖い気持ちになる可能性があります。
今いる世界と関係しているものは「体」であることを示すのが大切です。
上のほうから親が見守っていてくれると思うことで気持ちが休まる子どももいれば、逆に怖いと思う子どももいます。
子どもがどう感じるか、何を信じているかは一人一人違うので一つの答えでは示せません。だからこそ対応が難しいのです。
私の病院ではキリスト教・イスラム教・仏教・ヒンズー教の患者がいます。まず患者・家族が何の宗教かを調べる必要があります。そしてその宗教の枠組みの中で「死」は子どもにとってどのような意味を持つかを考えて対応していくことが大切です。

(Hope Treeフォーラム2011 質疑応答でのマーサの回答9)

親が療養している時から亡くなった後について、子どもの悲嘆に対する支援をするために教育現場、保育園、小学校の教師とはどのような点で連携すれば良いでしょうか。

親ががんの診断を受けた、またはがんで亡くなった場合に学校というのは大きな助けになります。
例えば、私の病院で亡くなった場合には、「子どもの学校に電話をして状況を伝えましょうか?」と残された家族に尋ねた上で、希望があれば学校に連絡を取ります。
そうすると、学校のスタッフは子どもたちの親に何が起こっているかということを把握したいと思っているので大変感謝してくれます。子どもたちにとって安全な場所である学校の先生たちが関わるということは大事なことだと考えられます。
例えば先生たちが一週間に一度こういった子どもたちとゆっくり話をするというのも良いことです。一人ではなく、同じような経験をした子どもたちを集めて、どういった苦しい思いをしたのか、親が亡くなった後に家族はどのように変わったか等お互いの話を聞くのも良いでしょう。

また、子どもというのは他の子どもたちと違った扱いをされたり、そのような目で見られることを嫌います。ですから、親が亡くなった子どもに対して学校で特別扱いをするということはしてはいけません。
子どもが嫌な思いをした時に先生に分かる何らかのサインを決めておいて(例えば耳の下を引っ張るなど)、そのサインが出たら先生はその生徒を職員室に呼んで話を聞き、もう一度元気が出たら教室に戻すというような対応も役に立ちます。

(Hope Treeフォーラム2011 質疑応答でのマーサの回答10)

子どもの悲嘆からの回復を助けるために、患者が病院に入院している時からできることはどのようなことでしょうか。

ひとつは、子どもの質問に答えること、それから出来るだけ子どもが親と過ごす時間を作ることが大切です。
まず、子どもの質問に答えることに関しては、例えば毛髪が抜けてきた、あるいは薬をのんでいるというように、子どもが目にしていてもそれがどうして起きているかが理解できないために質問してきたことに対して、適切に回答するということです。
あるいは逆に、医療者の方から子どもに質問をするのもいい方法だと思います。例えば酸素マスクをつけている場合に「なぜマスクをつけているか分かる?」というように聞いてみるのも良いでしょう。
また親がほとんど寝ている状態になってしまった場合、脳にがんが転移して進行しているためであればそれを説明しますし、薬の影響であればそれを説明します。きちんと状況を伝え、質問に答えることが大事です。
出来るだけ子どもが親と過ごす時間を作ることに関しては、例えば子どもが入院中の病室にいられるようにすることも大切です。その年代の子どもが通常行うような遊びを用意して一日病室で親と過ごせるようにすることも大事です。
いずれにせよ、患者さん、および患者さんのご家族と医療者が話をして、今、子どもが何を知っているのか共通の認識を持ち、親と子どもとの間での正直なコミュニケーションをとっていくことが、悲嘆からの回復の手助けとなります。

(Hope Treeフォーラム2011 質疑応答でのマーサの回答11)

母親が亡くなった後に子どもから「ママは死んだんでしょ?」と尋ねられた時、医療者はどのように対応すればよいでしょうか。

「そうね。死んでしまったのよ 」と答えれば良いでしょう。その後 「人が死ぬということはどういうことか分かる?」という形で会話を始めます。子どもが話せる状態のときは、「死ぬということは身体が働くのをやめてしまうことなんだよ」とか、「息をしなくなっているということなんだよ」だと話します。子どもがこういう質問をするときは、自分が目にしたことに対して、一体何が起こっているのか、それが本当におきたことなのかを確認し 自分の理解を確かめたいために聞いてきます。
もし子どもが泣いている時は、それ以上話をするのではなく、「そうよ、死んでしまったのよ」というところで話をやめて、子どもと一緒に座わったり、手を握るなどしながら、とにかく一緒にいることが重要です。その間、その子が泣きたいだけ泣く、感情を表したいだけ表す時間を作るということが大切です。大切なことは子どもたちが泣いているとき、私たちがそれを止めることはできません。私たちにできることは何もないということです。私たちができることは、ただ傍にいてその悲しみを受け止めるということです。

(Hope Treeフォーラム2011 質疑応答でのマーサの回答12)

思春期の子どもが居ます。普段から自分自身の問題で怒りや葛藤を抱えています。私ががんを持つことで、更に悩ませてしまうと思います。
どうすれば前向きに理解してもらえるでしょうか?

思春期には、そのような感情を持つことは自然なことです。
そして、家族と同年代の仲間の間をいったりきたりしながら、迷い道の出口を探っているのが思春期のこどもたちです。
そして、家庭から離れ、社会で自立できる成長を遂げていくのです。
親にはわからない心の葛藤や、親との考え方の違いが芽生えてくれば、健康に育っている証と思ってよいでしょう。
そんな時期に親のがん闘病について知ることは、お子さんが抱える問題を確かに複雑にするかもしれません。
しかし、親として、どのように”がん”と向き合っているかを伝えることは、お子さんが抱えている問題解決のひとつのモデルになるかもしれません。
「お前(お子さん))もよくやっている、自分(親)はこんな風に頑張っていこうと思っている」というような、お子さんへの指示ではなく、親の状況を分かってもらうという伝え方はどうでしょうか?

(聖路加国際病院小児科 小澤美和)

子どもに病気のことを話そうと思っているのですが、私自身の気持ちの整理がつかなかったり、タイミングを逃したりして、まだ話せていません。どうしたらいいでしょう。

病気のことを話そう、話した方がいいとわかっていても、なかなか行動にうつせないことももあります。しかし、そうした状態(葛藤)が続くと、こころは苦しくなります。
「まあ、いいか」とか、「子どもが聞いてきたら」と、先延ばしにすることもできますが、また同じ悩みがやってくるかもしれませんし、多くの子どもたちは、自分からは親の病気のことを聞けないものです。

その上で、ご自身に一歩踏み出す力が欲しいときには、どなたかにじっくりお話を聞いてもらうことが大切です。何よりも考えが整理されますし、子どもに応じた話し方を知ることで、不測の状況にも柔軟に対応できることでしょう。

もし、病気を話すことを考えるだけで、ご自身があまりにもつらくなったり、混乱されるようであれば、お近くのがん診療連携拠点病院の相談支援センターにご相談する方法もあります。その病院を受診していなくても、相談に応じています。看護師、ソーシャルワーカー、臨床心理士などが対応してくれるでしょう。

地域で活動している患者会に参加してみる方法もあります。同じような経験をした仲間が居れば、その時どうしたかのお話を聞くことができます。患者会の探し方が分からない場合は、相談支援センターに尋ねてみるといいでしょう。

話そうかどうかと迷うあなたの力が、よりたくましく生きていく力に変わっていくと信じています。

(国立病院機構 四国がんセンター 臨床心理士 井上実穂)

私が会社に行かないで家にいるため、子どもは不思議に思っているようです。疲れているから無理だと言っても、外で一緒に遊んで欲しいと聞き入れてくれません。どうしたらいいですか?

そうですね。確かに毎日お仕事に言っていたお父様(お母様)がお家にいると、お子さんは嬉しい反面、ちょっと不思議に思うでしょうね。
でもお子さんとしてはとにかく嬉しいので、「遊んで」とリクエストがあることは自然なことかもしれませんね。このような時、例えば次のような言い方もあるかなと思い書いてみました。

「今はちょっと疲れているから外では遊べないけど、家の中でオセロをしたり、一緒にテレビを見たりすることはできるよ。どっちがいい?それとも何か他にしたいことある?」
あらかじめご自分が無理なくできそうな遊びを具体的に挙げておくのも楽かもしれません。
基本的に、「~はできないけど~はできる」のように肯定的な答えを後に持ってくると全体のトーンが明るい感じになるようです。

もし体調の回復の徐気が予想できる場合(化学療法など)、「いつ(○曜日)だったらお外で遊べると思うよ」と具体的な日にちを伝えてあげると、子どもは見通しを持って待つことができます。
また体調によってはお子さんと一緒に遊べない時もあるでしょう。それも自然なことです。
できればご自分ひとりで悩まないで、家族でも友人でも頼れる人は頼って、短時間でも子どもの相手や家事の手伝いなど、してもらえるといいですね。

(千葉県子ども病院 チャイルド・ライフ・スペシャリスト 藤井あけみ)

親が子どもに伝えることが辛くて出来ないために、親に代わって看護師である自分が伝えることを頼まれてしまいました。
もし、話すことになったらどういうことに気をつければいいでしょう?

患者さんが辛ければ、配偶者など、他のご家族が出来ないでしょうか?
それでも難しければ、医療従事者同席であれば、お話することができそうですか?

本当のことを伝える場面は、親子の信頼関係が生まれる大切なチャンスとなります。可能な限り、そういった場を、まず設定できるといいと思います。

話し始める時には、最初に子どもが、病気のことをどう理解しているかを聞いてみましょう。もし誤って捉えている内容があれば、訂正することが出来、また子どもがどのようなことを不安に感じているかを知ることもできます。

子どもの理解の仕方は、発達段階によって微妙に異なってきます。
あらかじめ、自分の子どもに合わせた説明の仕方を考えておいてから話すと、より自信を持ってリラックスしてお話できるかと思います。

子どもに対する理解を深めるには、ホープツリーホームページ「子どもは何を考えているの?」の「翻訳資料」をご参照ください。

最後に「翻訳資料」から次の言葉をご紹介したいと思います。
「でも、覚えておいてください。あなたはあなたの子どもの専門家です。がんはとても抗し難く、破壊的なこともありますが、あなたが子どもたちのことを一番良く知っていることには変わりありません。この難しいときに子どもたちを支えるにはどうするのが一番良いか、あなたの感覚を信じてください。」

(東京共済病院 医療ソーシャルワーカー 大沢かおり)

学校の教師をしていますが、親をがんで亡くした子どもが、いつもイライラしていて、何に対しても投げやりな態度になってしまいました。
どのように声をかけたらいいですか?

親御さんを亡くされたということで、家庭内の事情もこれまでとは変わり、その変化についていけないのかもしれませんね。
あるいは、親を亡くした悲しみをイライラで表現しているのかもしれません。もしくは、孤独感や絶望感、なぜ自分をおいて先に逝ってしまったんだといった怒りなども感じているかもしれません。

このように、イライラした投げやりな態度の奥にも、お子さんの様々な感情があると思います。大切な人を亡くした際に、こうした感情が生まれるのは自然なことです。
そして、これらの気持ちを表出できることは、とても大切なことです。

ですから、イライラしていることを責めたり、叱ったりはせずに、
「イライラしているように見えるけどそう?先生の勘違いかしら?」
などと声をかけてみてください。
「勘違いだよ」、「うるさい、関係ない」などと言われたときには、無理に聞き出す必要はありません。
「話したくなったら、いつでもおいで」と声をかけて、「いつもあなたのことを気にかけているよ」「いつも見ているよ」というサインを送り、お子さんが動き出すのをそっと見守りましょう。

(東京都スクールカウンセラー 臨床心理士 衛藤美穂)

わたしのがんについて話してからずっと、息子は学校で問題行動を起こし、家にいたがるようになりました。どうしたら良いでしょう。

おそらく、お子さんはがんのことをとても心配していて、あなたが大丈夫かどうか確認するために家にいたいのでしょう。もしかするとあなたがお子さんの助けを必要としていると思っているのかもしれません。怒りを感じても混乱してもよいのだと伝えて、お子さんを安心させてください。そして、あなたはがんを治すために一生懸命がんばっているのだから、お子さんにも学校に行って勉強し、友達を大事にし、宿題やいろいろな活動を一生懸命がんばってほしいと伝えましょう。お子さんががんばったときにはたくさん褒め、宿題が終わったらゆったりした自由な時間を一緒に過ごすように心がけてください。子どもには、親が自分をみてくれることを確認する必要があります。学校の日課や毎日の決まった活動は、子どもが安心感を得るために役立ちます。

お子さんの担任教師や校長に、家庭で起こっている変化について必ず説明しましょう。地域によって異なりますが、スクールカウンセラーが居る学校もあります。このような専門家はお子さんが問題に取り組めるよう手助けできます。

わたしは現在寛解状態にありますが、娘はまたがんになるのか知りたがります。娘に何と話すべきでしょう。

寛解はとても良い知らせであることは確かです。寛解してどんなに嬉しいか、そして家族とともに楽しく過ごせることがどんなに待ち遠しかったか、お子さんに伝えましょう。またがんになるのではないかとお子さんが心配しているのなら、今のところその兆しはなく、今後もその状態が続くことを信じていると伝える必要があります。がんがない状態を保つために、あなたも担当医もできる限りのことをするつもりだと伝えましょう。再発の可能性が少しでもあるなら、そのときは一緒に立ち向かえるように家族に知らせるとお子さんに話してください。

がんについて子どもたちに話しているときに、取り乱したり泣き出したりしてしまったらどうなるでしょう。

伝えようとすることを書き出しても練習しても、お子さんに自分のがんのことを話すことは常に難しいものです。話し始めるときに、途中で悲しくなったり取り乱したりするかもしれないとお子さんに伝えましょう。そうすることで、お子さんはあなたの感情の動きに対する心の準備ができます。泣きそうになって話を続けるのが難しいと感じたら、少し話を中断して何回かゆっくりと深呼吸しましょう。親が悲しんだり泣いたりするのを目にするのは、子どもを傷つけることではありません。お子さんがあなたを慰めてくれたら、たとえば抱きしめてくれたら、褒めてあげることが大切です。どんな状況でも、お子さんの中に共感が芽生えたと知るのは決して悪いことではありません。落ち着いてきたら、話を再開しましょう。そうすることで、人は感情的になってもそれをうまく処理できるのだということをお子さんに示すことになります。話し合い支え合うことがいかに大切であるかを、お互いに学ぶことになるでしょう。重要なことは、つながりを保つことです。

治療で体調が悪くなり子どもの世話ができなくなったら、どうなるのでしょう。

できることなら治療開始前に計画を立てておくのが理想的です。その治療があなたにどのように影響するかを確実に予測する方法はないのですから、多くの支援を確保しておくと良いでしょう。配偶者やパートナーが仕事や受診の介助や看病で忙しければ、しばらく他の人にお子さんを頼むことが必要になるかもしれません。お子さんがよく知っている人、たとえば家族や親しい友人や親戚などに“取りまとめ役”を頼むのも一案です。他の友人や隣人が何かできることはないかと聞いてくれたら、その人が役割を振って、物事を動かすこともできるでしょう。たとえば、ある人は食事の用意、ある人はお子さんの送り迎え、ある人は食料品の買い出しやその他の家事を手伝ってくれるかもしれません。お子さんの活動をスケジュールに組み込めば、取りまとめ役の人の手を借りてお子さんの生活をできる限り普段と同じに保てます。お子さんを外泊や外出に誘ってもらえば、その間に休めます。友人や親戚や隣人は、手を差し伸べることであなたが回復に専念する時間を持てるとわかっています。頼むことをためらわないでください。

有料にはなりますが、お住まいの地域の民間の家事援助サービスについてはソーシャルワーカーへ、独自のシステムと料金体系で行っている生協の家事援助サービスの情報については地域の生協に問い合わせてみましょう。周囲に頼れる人がいない場合は、区市町村の役所・役場の子育て支援課や、自治体の保健所・保健センターの保健師にも相談してみましょう。保育園等の利用に診断書が必要な場合は、主治医に相談してみてください。診断書発行が必要であるとの理解が得られない場合は、看護師やソーシャルワーカーにも相談してみてください。公的なサービスを利用するに当たり、経済的な費用負担がきつい場合は、ソーシャルワーカーに相談したり、該当相談窓口の担当者に、伝え、費用負担が軽減される措置がないかどうかも聞いてみてください。

十代の子どもが私の担当医に会いたい、病院を見たいと言います。これは良い考えでしょうか。

十代の子が親のがんについてできるだけ多くを知りたいと思うのはよくあることで、医師と会いたい、治療施設を見たいというのはその表れです。これは良い考えです。十代のお子さんが医師に質問し、信頼できる相談窓口や信頼できる情報を提供している適切なウェブサイトを紹介してもらえるように、お子さんと会う時間を取ってくれないか医師に頼むこともできるでしょう。あなたのお子さんが大人のように物事に対処できることを見守ることは、あなたが彼らを信頼していることを示すことになります。お子さんをどれだけ誇りに思っているかを伝え、常にお子さんの気持ちに寄り添ってください。