がんになった親と子どものために

あの犬が好き

1236341534-448061_1

〈作者・訳者〉
シャロン・クリーチ 作
金原 端人 訳
〈出版社・値段〉
偕成社 1,260円
〈対象年齢〉
小学校中学年以上

大人でも子どもでも痛みを伴う気持ちは簡単に表現できません。この本の中ではそんな子どもの気持ちが、先生のサポートを受け、詩という媒体を通じて徐々に表現されていく過程が描かれています。

主人公のジャックは車の事故で可愛がっていた犬(スカイ)を目の前で喪います。ある日学校の先生が授業で詩を書く事を提案します。ジャックは詩なんてどうやって書いていいのかわからないし、女の子がやるもんだ、と言っていやがりますが、先生が授業中に紹介してくれる詩の中に、自分の気持ちを表現できるヒントを見つけ出していきます。最初のうちジャックの表現は断片的、部分的で、先生には彼が何かを表現したい事はわかっても具体的な事はわかりません。

この過程の中で、先生は質問はしますが、ジャックの嫌がる事は一切せず、ジャック自身が自分のペースで気持ちを表現するのをサポートして行きます。先生が詩の授業をする事を提案してから、ジャックがスカイを目の前でなくした情景を詩で描写し、スカイを懐かしんがる気持ちを表現するまで8ヶ月以上の時間がかかっています。自分の中の気持ちを認識し、それを言葉で表現できるまでには熟成の為の時間が必要な事がわかります。

ストレスをうけている人が、文章などで自分の気持ちを表現する事の重要性はいろいろな所で言われていますが、この本はその作業をサポートしていく時に必要なヒントを示唆してくれるような気がします。

一覧に戻る