配偶者の死後、子どもに新しいパートナーについて話すことについて
配偶者に先立たれた親として、新しいパートナーを見つけ、子どもに紹介したいと思う時が来るかもしれません。これは、あなた、お子さん、新しいパートナーなど、関係者全員にとって大変な状況です。子どもは、新しい相手が自分の人生に登場することで、恐怖、怒り、混乱など、複雑な感情をたくさん感じることでしょう。
亡くなった親のことをまだ悲しんでいる最中に、子どもに新しいパートナーについて話す「正しい」方法はありません。大切なのはコミュニケーションです。何が起きているのか、自分がどう感じているのかを子どもに伝えることができれば、子どもも同じことをするようになるでしょう。
私たちの経験豊かなチームは、新しいパートナーについて子どもにどのように話すか、どのタイミングで家族に紹介するか、このような状況で、悲嘆にある子どもが感じるかもしれない感情について説明します。また、お父さんやお母さんの死後、子どもの義理の親としての役割を担う新しいパートナーへのガイダンスも提供しています。
親の死後、新しいパートナーについて子どもに話す
新しいパートナーをいつ子供たちに紹介するかは、ウィンストン・ウィッシュで定期的に聞かれる質問ですが、簡単な答えはありません。配偶者が亡くなった後、いつ新しいパートナーを家族に紹介するのが適切なのかは、あなただけが決めることができます。ですが、考慮すべきことがいくつかあります。
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新しい関係はどの程度真剣なのか?
あなたのお子さんはお父さんやお母さんの死という非常に大きな喪失を経験しており、別の親代わりの人と関係を築くことに警戒心を抱くかもしれません。もちろん、その関係が長期的にどうなるかは誰にもわかりませんが、この新しい関係が子どもを巻き込むほど十分な意義のあるものであるかを確認することは重要です。
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新しいパートナーと人生を共にしたい理由を伝える
なぜ新しいパートナーと人生を共にしたいのか、その理由を話し合う場に子どもたちを参加させることは、あなたの選択を理解する助けになります。良い時も悪い時も一緒に分かち合える大人がもう一人欲しいけれども、亡くなった子どもの母親や父親を愛する気持ちや、子どもを愛する気持ちに変わりはない、ということを子どもが聞くのは良いことです。
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新しいパートナーは、亡くなった親の代わりにはならないことをはっきりさる
新しいパートナーの役割について、子どもと明確にしておくことが重要です。亡くなった親の代わりではなく、あなたがとても大切に思っている人であり、あなたの人生の一部でありたい人であることを説明します。こんな風に言うこともできます:
「[新しいパートナーの名前]がママの代わりをしようとするのではないかと心配するかもしれないし、それがとても怖く感じたり、少し腹が立ったりするかもしれない。この先どうなるのか、ちょっと怖い気もするけど、ママがいつも私たちの生活の一部であるようにするよ。」
もし子どもが私の新しいパートナーを受け入れようとしなかったら?
時には、新しいパートナーは遺児にとって対処しきれないほど大きなものであり、それに関わったり受け入れたりすることを完全に拒否する場合もあります。これには、子ども側のさまざまな理由が考えられます。
・誰かを失うことへの恐怖が、彼らの感情の一端を担っている可能性があります。別の親子関係を築いても、それが終わることを恐れているのかもしれません。あるいは、新しいパートナーが、残された親を「失う」ことを意味するのではないかということを恐れているのかもしれません。
・彼らはこの新しい関係を、残された親との最も大切な絆を脅かすものと考えているかもしれないし、この人を他の誰かと共有しなければならないと考えるのはとても怖いことです。
・あなたが最後に同じような関係を築いた相手が亡くなった親であったにもかかわらず、あなたが他の誰かと一緒にいるのを見ることに本当に苦しんでいるかもしれません。
これは子どもや思春期の子どもにとって、理解しどうにかするのが本当に大変なことですが、だからといって、こうした新しい人間関係が起きてはいけないということではないです。このような困難を乗り越え、新たな絆を築くことは、子どもにとって本当にプラスになります。このような変化に対応する能力と、自分の感情を理解し、それを伝えられるスキルを身につけることは、将来の成長に役立ちます。
子どもたちが、自分は信じられないくらい大切な存在であって、同時に、あなたのニーズもまた大切なのだということを理解する手助けをすることは、良いモデルであり、良いコミュニケーションとはどのようなものかを理解する助けになります。これは彼らが大人へと成長する上で重要なことです。
子どもが移行をより楽に感じられるようするため、新しいパートナーを子どもの生活に徐々に溶け込ませるのにできることがあるかもしれません。最初の初対面は公園で1時間程度にするほうが、週末を一緒に過ごすよりはるかに気後れせずに済むかもしれません。
悲嘆にあるパートナーの子どもの義理の親になる
親が亡くなった家庭に入ることに不安を感じるのは普通のことです。亡くなった親の代わりをしようとしていると子どもに思われることを心配しているかもしれないし、亡くなったパパやママとの思い出を消すことなく、子どもへの愛情を示すにはどうしたらいいかと悩むかもしれません。このことについて話すことは、本当に役に立ちます。子どもがどう感じているかを認め、いろいろなことを感じてもいいのだということを伝えます。大人であっても、常にすべての答えを持っているわけではないけれど、耳を傾け、サポートするためにここにいることを説明します。
子どもたちが亡くなった親のことを話すように促すことは、親の大切さを示す素晴らしい方法になります。
その人の人生を認めることで、子どもは亡くなった親がまだ自分の人生の一部であると感じることができます。死後、その人の思い出を語ることは役に立つし、新しいパートナーとして、それを続けることが重要だと感じていることを示すことができます。
あなたと子どもの間に人間関係が形成されるにつれ、子どもは自分の気持ちに戸惑い、不安になることがあります。亡くなった親に対する不誠実さを感じることもあります。オープンで正直であることが鍵であり、こうした複雑な感情を伝えられることは、子どもたちが自分の気持ちを理解する助けになります。こんな風に言うこともできます。
「私はあなたのことを本当に大切に思っているし、あなたが私の人生にいてくれて本当に幸せ。私は、母親が子どものためにするようなことはすべてしてあげたいと思っているけれど、あなたのママはいつもあなたのママで、それは決して変わらないことも分かっているからね。パパはときどき、私と一緒に素敵な時間を過ごすと罪悪感を感じるっていうけれど、パパはあなたのママのこともずっと大好きよ。幸せな時間があってもいいし、あなたのママも、あなたとパパに幸せな気持ちになってほしいと思っているはずだから。あなたのママを忘れることはないし、彼女はいつまでも私たちの人生の一部よ」
(2023年12月掲載)
※この資料は、Winston’s Wishの許可を得て「Talking to children about a new relationship after the death of a parent」を日本語に訳したものです。
Winston’s Wishは、グリーフによって世界が大きく変わった子供たちや若者が立ち直れるよう支援する英国のチャリティ団体です。
団体ウェブサイトは、https://www.winstonswish.org/です。
このコンテンツは、PDFでもご覧いただけます。
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